シンガポール経由でNVIDIAチップが中国へ？違法転売の実態に迫る

2025.03.02

中国AI企業「ディープシーク」に対する疑惑

近年、AI業界に急浮上した中国の「ディープシーク」が、米国の輸出規制の対象となるNVIDIAのチップをシンガポールの仲介業者を通じて入手したのではないかという疑惑が浮上しています。海外の報道によると、シンガポール当局はこの件に関して捜査を進め、3名の男性を起訴しました。

シンガポールの警察と税関職員は、2月26日に複数の拠点を捜索し、数名を逮捕しました。そのうち3名は詐欺共謀の罪で起訴されており、逮捕者の内訳はシンガポール人2名と中国人1名です。捜査当局は、事件に関する文書や電子記録を押収し、さらなる証拠の収集を進めているとのことです。

NVIDIAは、米国政府の規制により、特定の高性能チップの中国への輸出を制限しています。そのため、中国国内ではNVIDIA製品が入手困難になっており、転売市場で価格が高騰しています。一部の業者は、この需要に応えるためにシンガポールなどを経由し、規制を回避しながらチップを流通させているとみられます。

また、シンガポールは世界的なハブとしてNVIDIAのGPUの大規模な出荷拠点になっていることもあり、こうした違法取引が発生しやすい状況にあると考えられます。

日本でも、NVIDIA製品の違法転売に関わる事件が発生しました。PCパーツ販売店「PC工房」において、一部の転売業者が高性能GPUを大量に買い占め、中国市場へ転売していた疑惑が持ち上がりました。

当局は、こうした転売行為が市場に与える影響を考慮し、調査を進めています。日本国内での転売規制の強化が求められており、今後はNVIDIA製品の販売方法に関するルール変更が行われる可能性もあります。

今回の事件が事実である場合、NVIDIAは今後さらに厳しい規制を受ける可能性があります。現在、NVIDIAの売上の約3割は中国市場が占めており、シンガポール経由での供給が遮断されれば、利益に大きな影響を与えることが予想されます。

また、米国政府はシンガポールに対し、不正取引を防ぐための更なる規制強化を求める可能性が高いでしょう。これにより、今後の国際的な取引のルールや監視体制が一層厳しくなることが考えられます。

NVIDIAのチップに限らず、近年の転売市場は大きな問題となっています。特に、暗号通貨のマイニング需要やAIブームにより、高性能GPUの供給不足が発生し、価格の高騰を招いています。これに対し、各国は転売防止策を講じる動きを見せています。

今後の対策として、メーカー側がライセンス管理を強化し、不正な流通を防ぐ仕組みを導入する可能性もあります。例えば、NVIDIAのアカウント認証を必須とし、正規の購入者以外が使用できないようにするなどの施策が考えられます。

今回のシンガポールでの逮捕劇や日本でのPC工房の転売問題は、NVIDIAのチップがいかに世界的に需要が高く、規制が厳しくなっているかを象徴する事件となりました。今後、シンガポールをはじめとする各国の対応や、NVIDIAの販売戦略の変化にも注目が集まるでしょう。

また、転売市場の動向や国際的な規制強化の流れにも引き続き注視しながら、正規の取引が行われる環境が整備されることが望まれます。